<肥満外来>

現在、肥満外来の受付はしていません

 肥満外来って何かあまりよい響きではありませんね。あまり通っているのを人には知られたくないという人も多いでしょう。そのため口コミでは広がらない外来でもあります。
 ダイエット外来や痩身外来でも良さそうですが、エステと間違えられそうな気もします。多くの医療機関で肥満外来が一般的な名称として通用しているようですし、当クリニックでもこの名称を使用することにしています。

さて、肥満外来って何をしてくれる所でしょうか。かなりの方が、何か特別な薬でもあって、簡単に痩せさせてくれると期待して来院しているようです。こういう方々は、「自分で努力して痩せなければだめですよ」という言葉を聞くだけでガッカリしてしまうようで、2、3回で来なくなってしまいます。

 私は、肥満外来は、患者さん本人に「気づき」を与える場だと思っています。そのために、MRIで体脂肪を見せつけたり、血液検査や動脈硬化検査で、生活習慣病の危険性を把握してもらっている訳です。
 通常の病気は病院でお医者さんに薬をもらって治してもらう(本当は違います。自分の自然治癒力で治しているんですがね)という考えが普通ですが、肥満は異なります。基本的に肥満を治す薬はありませんから、自分で食事制限をし、運動を沢山して痩せなくてはいけません。ですから私は叱咤激励することしかできません。患者さん本人がやる気になってくれなくては、痩せる事は不可能です。

 食事制限を厳しくすれば、体重は減ります。しかし、この時減るのは、大切な水分や筋肉・骨であり、実は脂肪はほとんど減っていません。そして無理な食事制限の後には必ずリバウンドがきますから、以前より体脂肪が増えて不健康になり、やらない方が良かったという事になります。
 基本的に食事制限は新たに脂肪が付くのを防ぐ目的であり、脂肪の少ない和食系の食事に転換していきます。減量が終わったからと、食事を元に戻したら、またリバウンドするだけです。年をとるにつれて基礎代謝も運動量も減っていくだけですから、食事量もそれに合わせて減らしていかなくてはいけません。食事制限とは、これから一生続けていっても良いという食事法を見つける道だと思って下さい。

 そして、現在付いてしまっている体脂肪を減らすのは、有酸素運動しか無いと考えた方がよいでしょう。運動法はその人の体力や年齢によって処方が異なりますが、基本的には沢山歩く事です。毎日1万歩キビキビと歩きましょう。私自身が実践して来て今も続けている方法ですから確かです。体脂肪も減り、生活習慣病も改善します。
 あとは、ダンベル体操で、筋肉をつける事です。筋肉は基礎代謝の多くを占めていますから、基礎代謝を増やしてやれば、体脂肪も少しづつ減っていきます。ダンベル体操は実は面白くありません。私も今では辞めてしまっています。でも最初の2〜3ヶ月だけ頑張ってやって下さい。これで筋肉が付いてきます。そのあとはストレッチ体操で十分です。ストレッチ体操は道具が無くても出来ますし、バリエーションが多いので長続きしますね。私は毎朝起きた後に十分間のストレッチ体操を欠かさずやっています。1日の始動がすんなり行くような気がします。

 体脂肪だけを減らし、リバウンドの無いダイエットのために、月に1Kg程度の緩やかな減量を目標とします。これには一応根拠がありまして、脂肪1gを消費するのに、約9Kcal必要とされています。1日に300Kcalの運動をしたとして、33gの脂肪が燃焼されます。これを1ヶ月続けて約1Kgの体脂肪減となるわけです。(勿論、実際は異なりますがね)
 

<肥満外来を受診すべき人>
 
 それでは肥満外来に来て内臓脂肪を調べるべき方としては、

1)腹囲がどんどん増えてきている。(男性で85cm以上、女性で90cm以上)
2)人間ドックや健診で、血中のコレステロール、中性脂肪、尿酸、血糖値が高い、あるいは高血圧がある。
3)ウェストの数値を身長で割ってみて、結果が0.5以上の方(内臓脂肪型肥満の可能性大です)
4)お腹が出ているのに、皮下脂肪を少ししかつまむことができない。
5)男性は30歳代から要注意です。女性は閉経後からが要注意です。
6)BMI(体格指数)が25以上で、明らかに肥満体型である。

 と、言うわけで、基本的に若い痩せ細った女性は対象外です。BMIが18.5以下で明らかに痩せすぎなのにさらに痩せたいと思うのはどういう訳なのでしょう? マスコミによる激やせ崇拝や、痩せたひとしか着られない服を作るメーカーも悪いのですが、世界でも、こんなに痩せ願望の強いのは日本だけだそうです。日本人しっかりして欲しいものです。

<若い女性への警鐘>
 棘筋27m 棘筋73m 棘筋23f
 最近、筋肉をつけなさいといつも言っているので、脂肪を測定すると同時に、筋肉も見るようにしています。特に身体の姿勢を支える、脊柱起立筋に注目しています。
 上の写真は、仙骨の1番の位置で、棘突起の左右にある脊柱起立筋(棘筋)を撮ったものです。左の写真は27歳男性で、棘筋は十分に付いています。中央は73歳男性で、棘筋の中に白く見える脂肪が入り込んできており、筋肉も少し痩せてきています。この歳なら年齢相応と思われます。右の写真は棘筋の中に大量に脂肪が入り込んでおり、筋肉はごく僅かしかありません。まるで80歳位の方の筋肉のようですが、実はこの写真は23歳の女性です。これでは姿勢を満足に保つ筋力があるとは思えず、街中ですぐに座り込んだり、赤ん坊を抱く体力が無い若いお母さんはこんな筋肉なのかなと想像してしまいました。
 この写真を見た時はショックでしたね。若い人はめったに撮らないので、今まで気付かなかったのですが、これが痩せるために無理なダイエットとリバウンドを繰り返した結果だとすれば、恐ろしいことです。そのうち機会があれば、若い痩せすぎの女性を調べてみたいものです。

 痩せたい若い女性の方へ
 無理な食事制限だけのダイエットを繰り返していると、表面上は脂肪のほとんど無い、スレンダーな身体になるでしょうが、無理なダイエットでは筋肉が無くなっており、その部分が脂肪に置き換わっていきます。なかなか気付きませんが、骨も痩せて内部はスカスカになっていると思われます。
 痩せるなら、運動で筋肉を付けて痩せましょう。毎日スポーツジムへ通って、何しろ筋力をつけましょう。引き締まったはりのある身体になるはずです。
 
<何のために痩せるのか>

 さて、肥満外来へこようかと悩んでいるあなた。なぜ痩せたいのでしょうか?
その目的をまずはっきりさせないと、なかなか続きません。ダイエットをすると言う事は、かなりのエネルギーと我慢を強いられる事です。中途半端な気持ちでは大抵挫折してしまいます。
 生活習慣病があって、痩せなければ命も危ういというような方は、目的がはっきりしていますから意外と長続きします。
 生活習慣病でも、まだ血液検査の数値が少し悪い程度の方は、始めてもすぐに挫折します。何しろ生活習慣病というのは症状は何も無いのですから、しばらくすると、何で苦労して痩せているのか・・・アホらしくなってくるんですよね。でも、こういう方は実は目標体重まで頑張る必要はないのです。10%も痩せれば、生活習慣病の異常値は劇的に改善してきます。ですから、自分で生活習慣病の最後を良く勉強して、そうならないために頑張ることが必要です。
 人間ドックや健康診断で痩せなさいと言われて痩せようとする方は、まず自分の病気に関する事を良く知る事が必要です。人間は他人に指示されて動くのはいやなんですよね。医者の命令はしばらくは聞きますが、時間が経つと忘れてしまい、結局辞めてしまいます。自分で何のために痩せるのか、目的をはっきりさせましょう。

 女性は、自分のプロポーションを良くするために痩せたい方が多いと思います。閉経前の女性はホルモンの関係から内臓脂肪型肥満になる方は少なめで、ほとんどが皮下脂肪型肥満です。皮下脂肪は内臓脂肪に比べると血流が少ないため、減りにくいです。皮下脂肪もそれほど多くないのに下腹が太って見えるのは、ほとんど深層筋の筋力不足です。運動をほとんどせずに、ファーストフードやスナック菓子を食べ、太ったと言っては必要な栄養素のある三度の食事を削ってしまいます。これは悪循環を呼ぶだけで、ますます筋力が失われて、基礎代謝が落ちてきます。きちんと三度の食事(主に和食)を食べて、沢山運動をする事です。結構苦しい道ですが、自分がブランドの服を着た姿を想像しながらがんばりましょう。
 

<痩せるとどうなるの?>

 皆さん、痩せたらどうなるのでしょう? 痩せようと思う気持ちは強い方が多いのですが、痩せたあとどうなるのか考えている方は少ないのではないでしょうか。これを考えていない方は、既に心の隅で挫折してリバウンドする自分の姿を見てしまっているのではないでしょうか。目標に達した後のことも良く想像しておきましょう。
 目標に達したあとも、リバウンドしないためには、昔のようにファーストフードや甘い物は沢山食べられません。運動も目標に達したからと急にやめると、筋力は見る間に減っていきます。つまり、目標に達したからとそれまでの食生活と運動を変える事はできないのです。維持するためにもその生活習慣を続けていかなければいけません。一生続けられる食生活と運動習慣を見つける道なのです。ですから苦しいダイエットなどは一生続くわけがなく、緩やかな減量以外は続きません。

 私が、痩せてみて良かった事と、困った事を挙げてみましょう。

<痩せて良かった事は>
・生活習慣病が改善した。
・身体が軽い。駅の階段を上まで上っても息切れしない。
・電車の中で座れなくても平気。
・早足で歩いて、沢山の人を追い越していくのは快感!!
・足の爪が簡単に切れるようになった。(以前はお腹が邪魔で苦しくて大変だった)
・知人に会うと「痩せたね」と言われた時の優越感。
・和食中心になったら薄味でも大丈夫になり、和の微妙な味がわかるようになった。
・ダイエット向けの食事を自分で作るようになり、奥さんに喜ばれる。
・食の安全に目が向くようになり、安全な食材を使うようになった。
・外食が減った

<痩せて困った事は>
・ズボンがぶかぶかになってしまった。
・冷え症になってしまった(漢方薬で治りますが)
・外で食うものが無くて困ってしまう。

 皆さんも、自分が痩せたあとの事を十分に想像してみましょう。
 

<肥満治療の流れ>
1)初診時
 身長・体重・問診・血圧測定・血液検査などを行います。最近人間ドックや職場の健診で血液検査をなさっている方は、その結果をお持ち下さい。当日、次回のMRI検査の予約をして下さい。
2)MRI検査
 MRIにて内臓脂肪・皮下脂肪の量を測ります。この結果を基に、今後の減量の方法を指導します。通常は腰椎のMRIを撮りますから、腸腰筋や背筋の状態も調べます。
3)経過観察
 その後は2週間〜1ヶ月おき程度に来院して下さい。毎日の体重の記録、歩いた歩数、ダンベル体操の時間、食事日記などを付けて持って来ていただき、それをもとに指導致します。
 検査の結果、病気が見つかった場合は、その治療も併用していきます。通常はまず数ヶ月肥満治療をしてみます。それでも検査値が改善しない場合は漢方薬を併用します。西洋薬の使用は最後の手段と考えています。

 ダイエットは本人の強い意志と不断の努力が必要です。しかし長い期間続けて行く事になりますから、あまりに厳格にやっていくと長続きしません。多少の失敗はその後の努力で取り戻せますから、のんびりといきましょう。ストレスを与えるようなダイエットは長続きしません。
 
 

<コラム>
 これだけ世の中に肥満の人があふれていて、ダイエット産業花盛りなのに、なぜ医療機関では熱心に肥満指導をしてくれないのでしょうか。これだけ沢山の医療機関があるのに、肥満外来を設置しているところはごく僅かです。
 それは肥満治療では儲からないからです。高度肥満でBMIが35以上の場合のみ、短期間だけ食欲抑制剤を健康保険を使って投与出来ます。生活習慣病のある方は、今はまるめで保険点数がとれますので、肥満指導をしても何とかやっていけます。全く病気の無い健康な肥満な方ははっきり言って、何もお金をとるすべがありません。
 そのうえ、薬を出すだけの慢性疾患の方は3分診療で十分に数をこなしていけますが、肥満外来はそうはいきません。かなり時間を割かないと十分な指導はできませんから、費用対効果の関係で誰もやりたがらないと言うのが実情では無いでしょうか。現在の保険医療制度の中では、何しろ患者さんの数をこなさなければ、医療機関はやっていけないのです。大きな病院では、栄養士、運動療法士、心理療法士、看護師などとチームを組んで肥満指導をしているところもありますが、おそらくこのチームの分野は赤字で、病院としてはサービスでやっていると思います。
 厚生労働省も、生活習慣病の急増に頭を痛めていて、予防医学の面にも金を出すようにするとは言っていますが、医療費削減の中でどこまで本気かはわかりません。基本的に、肥満に良く効く高い薬が開発されれば、この分野にも保険点数が配分されるようになってくるでしょうがね(けして製薬会社と癒着していると言っている訳ではありませんが)
 私のクリニックは暇ですから、肥満外来の患者さんとゆっくり喋っている時間がとれますが、将来忙しくなれば(そんな日がくるとも思えませんが)肥満外来はやっていけなくなるかもしれません。

 肥満は高度肥満以外は医療保険上病気とは認められていませんから、患者さんも自分の状態を楽観的に見ており、しばらくは通って来てくれますが、体重が減らなくなってくると来院を中止してしまいます。私の力の足りないところで、いつも反省はしているのですが・・・・
 生活習慣病を合併していて、薬を続けて飲んでいないと危ないような人も来なくなってしまうと、やはりかなり落ち込みますよね。多分他の医療機関に代わったのだろうと解釈して自分を慰めてはいますが・・・・
 肥満外来で有名な大病院でも、継続して通ってきて、減量に成功する人は50%程度だそうです。これでも肥満外来としては驚異的な数字で、肥満学会での発表の時にはどよめきがわきあがりました。ですから、私のクリニックで、成功者が2〜3割というのは標準的な部類だと思います。かなりフラストレーションの溜まる外来であり、将来まで続けていくべきなのか考えてしまいます。
 でも、最初は暗い顔をして通っていた患者さんが、少しづつ体重が減ってくると、だんだん明るくなってくるんです。努力すれば痩せられるという事がわかってくると、やる気が湧いてくるんだと思います。「病は気から」と言いますが、逆も真なりで、肥満が改善してくるとメンタル面が改善されてきます。患者さんが明るい「気」を出していると、私も癒されて気分が良くなってきます。このあたりは医者冥利につきるところですね。皆様に「愛と感謝」です。

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